Copy
モノガタ x L'Express
ブラウザで読む
こんにちは。4月13日(火)です。
今週のメールマガジン モノガタ レ クスプレス をお届けしています。
 
#175 < 書籍紹介その2 > 経験主義と統計学
// エマニュエル・トッドの思考地図

引き続きのトッド

先週に引き続き、今回も『 エマニュエル・トッドの思考地図 』を紹介させてください。

歴史の捉え方が独特なのです。ハイ。

先日、合気道稽古を夢見ました。久しく稽古に出ていないのですが、なぜか海外の合気道家との稽古。しかもフランス人の道友から「久しぶり~」と声を掛けられ、「今度フランスに来なよ」とさそわれる夢でした。

なんでフランスなのだろうと思っていたのですが、メルマガの構成を考えていて納得。フランスの歴史学者 エマニュエル・トッドの影響ですね(笑)

認知心理学ではプライミング効果というものが認められています。理性的にふるまっていても、人間の脳は直前の情報に影響を受けるものだそうです。これだなぁ~

さて、本題です。

 

トッドが影響を受けたもの

家族の形態から世界の多様性を描き出すのがエマニュエル・トッドのスタイル

本書(エマニュエル・トッドの思考地図)を読むと、なぜトッドがそこに至ったのかが描かれています。

"トッド・スタイル" の軸となるは大きくこの2つ。

経験主義(イギリス)
統計学

「経験主義」に至るにはトッドの出自も関係するようです。トッド自身は、父母の系譜が小説家であったり、ジャーナリストであったり、父方の祖父がユダヤ人であったりとフランスに居ながら、フランス人ではない自己を認識しています。

ゆえにフランスの考え方、合理主義とは距離を置いている、と。

わたしもなんとなくしか知らなかったのですが、フランスは「合理主義」な人が多いと言われ、対してイギリスは「経験主義」の人が多いと言われます。そしてトッドは経験主義寄りと自認しているのです。

三省堂【 大辞林 】によると...

合理主義:すべてを理性的に解釈しようとし、合理的なもののみを認めようとする考え。デカルト(仏)、スピノザ(蘭)、ライプニッツ(独)などの大陸合理論が代表的。

経験主義:理論的認識によらずもっぱら自己の具体的な経験のみを重んる態度。イギリス発でベーコン、ロック、バークリー、ヒュームが代表的。

とあります。

この違いは何か。トッドは歴史の捉え方を例に挙げます。

エマニュエル・トッドの思考地図 筑摩書房 2020.12.25刊
p.79-83 あたり(わたしの解釈含む)

合理主義者が歴史を捉えると、まず抽象的な問い「人間とは何か」から歴史を捉えがち。

一方で、経験主義者はただ歴史に起きた事実を追う。ゆえに「歴史に語らせる」ことを重視する。

とあります。


大きな違いですよね。

では事実からなにを拾うのかというと、そこで効いてくるのが「統計学」の切り口です。

 

経済変数、死亡率、乳児死亡率

トッドは統計学を学んだこともあり、統計資料やデータの収集も日常にしているそうです。トッドをもってしても歴史資料から統計的な数値を集めるのは難しいそうで、そこにトッドのクリエイティビティを感じました(が、本書ではそこはさらっと流されています)。

さて、トッドを有名にしたのはソ連の崩壊を予測したこと(最初の著作『最後の転落(1976年)』にて)と言われます。

どうやって、予測を可能にしたのでしょうそれが統計学の切り口です。

エマニュエル・トッドの思考地図 筑摩書房 2020.12.25刊
p.141, 181-183 あたり(わたしの解釈含む)

・家族、宗教、教育レベル、経済変数、死亡率、乳児死亡率が大切
・これらは経済、心的、そして "生物学的な状況を描く" 根本的な変数
・中長期的な分析を可能にする

とあります。

1970年代は好調に見えていたソ連の崩壊を予測しえたのは、とあるデータからソ連の乳幼児死亡率が増加していることを発見したことだと言います。しかも、その乳幼児死亡率はトッドが発見した翌年から公表されなくなったそう。

1989年のベルリンの壁崩壊から逆算すると、1970年代に生まれていた子どもたちは成人年齢近く。この世代の乳幼児死亡率が高かったことを発見し、ソ連崩壊を予測しているのです。
※ちなみにトッドは"世代"はだいたい四半世紀ごとで捉えている模様

人口に関わる統計は、生き物は必ず死を迎えるゆえ、ごまかしようのない数字だとトッドは言います(逆に経済数値はいくらでも解釈ができる)。

事実を見つめる経験主義、そして統計学の合わせ技でなせた発見です。

さて、これがストーリーテリングとなにの関係があるのでしょうか。事実を見つめ、数値を重ねるのみだと飛躍が魅力的な物語づくりとは相反するように思います

しかし、トッドはこうも言います。

エマニュエル・トッドの思考地図 筑摩書房 2020.12.25刊
p.227 あたり(わたしの解釈含む)

予測は経験主義から出る。しかし、予測は芸術的なものである。本能、直感、歴史家としての経験を自由に解放させ、いくつかの"予測を断行する"、と。

前回のメールマガジンでは、トッドが仮説を見つけるまで情報集めを重ね、仮説づけるのも勇気を持って行うことを書きました。

仮説のあとの裏付け。そして、次の予測でも "断行する" という...なんともエネルギーが必要な行為をしていることがうかがい知れます。

わたしは最近、ストーリーテリングの目的をこう考えます。

あっているまちがっているの域ではなく、読み手を解放することが目的ではないかと。


トッドの準備と断行を知ると、ちょっと救われるのでした(笑)


参考まで)アマゾンへのリンク
エマニュエル・トッドの思考地図 by 筑摩書房 (2020/12/23)
https://amzn.to/2Q35eyz

 

コーヒーブレイク

ちなみに(本書の場所は忘れましたが)、トッドは移民が選ぶ結婚相手のデータにも国の行く末が見て取れることを発見したとあります。

トッド自身は家族の在り方が人間を決めるという論調で、合理主義のフランス学会からは大ひんしゅくを買ったと言われます。

p.166 引用
たいていの学者は、人間を抽象的な「人」として捉える傾向があるからです。それに対して、私は、男性は何%、女性は何%というふうに具体的な思考をしていくのです。

ここにトッドらしさが表れているのでしょうか。



:::編集後記:::
わたしはF1ファンなので、期待の新人角田裕毅選手のことばかり触れていました。が、昨日4/12ゴルフ界でも偉業が成し遂げられたようですね。

松山英樹選手が日本人初、マスターズVとのこと。おめでとうございます!
+ 物語のチカラ を信じて
Story innovation - ストーリー・イノベーション - は
「物語」を用い、貴社(および社内)とお客さまとの関係を維持する仕組み作りをサポート。
本サイトは、コミュニケーション・デザインを企画する
MARC LOGUE(マーク・ローグ)が運営をしています。

MARC LOGUE 代表  原田 健也
メールマガジンバックナンバーはこちら

Copyright © 2021 Story Innovation, All rights reserved.